2020.11.12
ALL NEW Renault LUTECIA Debut NEW ARRIVAL 02:ルーテシアの進化がもたらしたもの。それは"余裕"と"余白"。
ルーテシアの進化がもたらしたもの。
それは"余裕"と"余白"。
パフォーマンス、デザイン、先進機能……と、あらゆる面で進化した新型ルノー ルーテシア。
でもスペックだけで車の良さは語れない。その進化が本当にもたらすものとは何なのだろうか。
私が人生で初めて買った車は「ルノー ルーテシア」だった。OLから転身し自動車メディアの仕事を始めたばかりで、車のことは皆目分からず、ただ勧められるままに購入を決めた。 買ったのは2代目後期型のルーテシアで、1.2クイックシフト5というモデルだった。独特のドライブフィールで、今思うと初心者にはお世辞にも乗り易いとは言えなかったが、高回転まで伸びてゆく気持ちの良いエンジン、高速道路のつなぎ目をシュッシュッといなしてゆく足回りなどは今も忘れがたい。慣れるまでに苦労もしたが、ルーテシアが私に車のおもしろさのなんたるかを教えてくれたことは間違いない。
そしてあっという間に時は過ぎ、ルーテシアは今回のフルモデルチェンジで第5世代となった。第4世代のデビューからすでに7年が経過し、プラットフォーム、エンジン、ミッション、デザイン、インテリアなどあらゆるものが一新されたという。なにより、衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進運転支援システムは、今の時代には無くてはならない機能であり、これらが搭載されることは誰もが待ち望んでいたことだろう。実際、アダプティブクルーズコントロールやレーンセンタリングアシスト、おまけに制限速度などの道路標識まで読み取ってくれて至れり尽くせり。なんだか隔世の感がある(笑)
デザインはというと、より力強さを増した。その分、全体的にフェミニンさは影を潜めたが、相変わらずエレガントで、かっこいい。きりっと整えられたLEDの目元も素敵だ。
外観以上に印象が変わったのはインテリアで、「ルーテシアはあのチープな感じがいいんだよね」なんてことはもう言えなくなった。白と黒のツートンはシンプルだけど、質感にもこだわりが感じられるし、パネルも大きくてとても見やすい。
センターコンソールに配されたアンビエントライトはどちらかというと控えめでそこがまたいい。日中はほとんど気づかないくらいだけど、ひとりで走る夜のドライブではこのほのかな明かりが気持ちをほっとさせてくれるだろう。
刷新されたエンジンはルノーの言葉を借りると「コンパクトカークラストップレベルの性能」で、ミッションも7速EDCとなった。アクセルを踏み込むと、ぐぐぐっと力強く加速していくのは爽快だ。ぎゅっと路面を掴む感じよりもっとスーッと前に転がっていく感じは今風の走りだなぁと思う。パドルシフトを試してみたが、7速もあるとどのくらい落としたらどのくらい利くのか、最初はうまく使えず、その下手っぷりには我ながら笑ってしまった。でも慣れてくるとパドルシフトの操作もまた楽しい。スポーツモードは街中や高速道度では私にはトゥーマッチだけれど、それがあるということが大事なのだと思う。
でもどんなに立派になって、優雅に洗練されても、ルーテシアはやはりどちらかと言えば人を前のめりにさせる車であって、そういうところはまったく隠しきれていないのがなんだかおかしい。時代が変わり、車に求められるものが変わっても、ルーテシアのDNAはちゃんと受け継がれていると分かって、私は素直に嬉しかった。
エンジンの性能が上がり、先進運転支援システムが搭載され、内装も充実し、結果として新型ルーテシアがもたらしてくれるものは何かと言うと、それは“余裕”ということかもしれない。欲しいだけのスピードを瞬時に出せること、危険を予測できること、美しいインテリアに囲まれて気分がいいこと。そして今回、ボディサイズが大きくならなかったことも私は素晴らしいと思っている。狭い道でのすれ違いで焦ったり、都心の駐車場で過度に気を遣わなくて済むのはこれもまた心の余裕につながるから。新型ルーテシアはその余裕で、共に過ごす時間を豊かにしてくれるに違いない。
若林 葉子 Yoko Wakabayashi 編集者・ライター
1971年大阪生まれ。大学卒業後、OLを経てカー&モーターサイクル誌『ahead』編集部へ。2017年から約3年半編集長を務めた。現在はフリーランスとして活動している。