2019.12.06
RENAULT PRESSE #94 Column:私のフランス歳時記 VOL.4 HIVER クリスマス Noël
私のフランス歳時記 VOL.4 HIVER
クリスマス Noël
11月上旬にもなると、早くもノエル(クリスマス)の雰囲気が街のあちこちに感じられるようになるパリ。まず口火を切るのがデパートのショーウィンドウでしょう。パリの3大デパート、「ギャラリー・ラファイエット」「ル・ボンマルシェ」「プランタン」のウィンドウは1年以上も前からアイデアが練られ、毎年相当凝った演出のスペクタクルを競います。ファンタジーだったり、ロックテイストだったり、子どもたちが喜べるような仕掛けが多いのですが、その世界観や出来栄えには大人でもうっとり。日が落ちる頃、ウィンドウの前には見物客が大勢押し寄せています。
街路樹のイルミネーションではシャンゼリゼ通りがやはり有名です。毎年盛大に点灯式が行われ、昨年は惜しくも今年2月に亡くなったカール・ラガーフェルドがカウントダウンとともに点灯ボタンを押しました。今年は11月20日、是枝裕和監督がフランスで撮影した最新作『真実』に出演する女優、リュディヴィーヌ・サニエが登場します。このイルミネーション、長らく白や青い光でしたが、昨年、史上初めて赤い光が灯り、今年も赤色で継続だそうです。ほかに宝飾品店やホテル・リッツが立ち並ぶヴァンドーム広場、マドレーヌ広場から伸びるロワイヤル通りの脇に入った「ヴィラージュ・ロワイヤル」のイルミネーションは、とても大人っぽく、シックで見とれてしまいます。
街の普通の花屋の店先にモミの木が並ぶ光景も、この時期ならではの風物詩ですね。場所をとるのでネットがかけられていますが、お店の人に頼めば外してくれて、枝ぶりや大きさを見て買えます。モミの木にも3種類ぐらいあり、最近はあまり枝が広がらず縦に細長いタイプや、香りがいいタイプ、葉っぱがあまり落ちないタイプが人気だとか。
新しいカルチャーが生まれるパリでも、クリスマスは伝統を大切にして、変わらず家族とともに家で過ごすのが定番。夜のご馳走は牡蠣、フォアグラ、シャンパンで決まりです。どんな庶民的なスーパーに行っても、この3つは売っています。牡蠣は、鮮魚店はもちろん、カフェの店先で木箱に入って売られているのをよく見かけます。数が多ければ、あらかじめ魚屋さんに殻を開けるのを頼んでおくこともできます。フォアグラは、時間に余裕のある人は肉屋で生の鴨のフォアグラを買ってきて自家製を作ってしまいます。筋を丁寧にとって型に入れ、湯煎にしてオーブンで火を入れるのですが、味付けに塩とアルコールをふります。その際ポルト酒やコニャックなどを入れるのが伝統ですが、意外にも日本酒もいい風味がついてオススメです。
寒気の中、街が1年中で一番キラキラと輝くノエルの季節。でも25日が過ぎれば、1月のセール時期を迎えるまで、街は急に閑散として、年末年始のカウントダウンだけは別にしても、意外に素っ気なく地味に過ぎていくのです。
松原 麻理 Mari Matsubara
9年間のパリ生活を経て、現在は東京で雑誌を中心に編集・執筆活動中。パリ在住中に取材・執筆した連載をまとめた『&Paris パリの街を、暮らすように旅する。』(マガジンハウス刊)発売中。 Instagram @marianne_33
※掲載情報は2019年12月時点のものです。