2023.03.31

KANGOOのすべて Engineering ADAS/日本でのテスト走行、実に5,000km!

  • Report:佐野弘宗/Sano Hiromune
    Photo:平野 陽/Hirano Akio

  • LCVテクノセンター
    ADAS担当エンジニア

    サミルディン・モハメド/Samirddine Mohamed


  • 新型カングーにおいて先代から最も進化した部分 ─
  • それはADAS(先進運転支援技術)かもしれない。
  • そしてそれは、日本の交通環境も視野に入れ、
  • しっかりと時間をかけて作り込まれたのだ。

新型カングーは14年ぶりのフルモデルチェンジとなり、パワートレインの一部を除いて全身が新しい。しかし、その中でも最も新しいというか、新旧で最も大きく異なるのは先進運転・駐車支援システム(ADAS)だと、サミルディン・モハメド氏は断言する。モハメド氏は新型カングーのADASを担当した若手エンジニアだ。最近の自動車技術としてはいうまでもなく、このADASと“電動化”が花形の分野である。

モハメド氏は新型カングーのADASを「まさにナッシングからフル……の最大限の進化」と表現した。ADAS技術は、それがごく簡便な低速専用の衝突軽減ブレーキだとしても、準備が何もなされていないクルマに追加するのは困難という。まして、車両のスミズミまで高速相互通信網を張り巡らせる最新ADASは、プラットフォームの基礎設計段階から然るべき準備をしておかないと実現は不可能に近い。

先代カングーは2008年5月に本国デビューした。ボルボはこの年に初めて市街地用の低速衝突軽減ブレーキを実用化したばかりだった。まして、そのプラットフォーム自体の設計は2002年の2代目メガーヌまで遡るから、ADASなど夢のまた夢だったのだろう。実際、先代カングーはラストイヤーの2021年まで、衝突被害軽減ブレーキはおろか、ACCや車線逸脱警告といった初歩機能も含めて、ADASの類は何も搭載されずに終わった。
一方、新型カングーに搭載されるADASは、歩行者や自転車、夜間にも対応する「アクティブエマージェンシーブレーキ」、レーンセンタリングアシストとACCを組み合わせた「ハイウェイ&トラフィックジャムアシスト」、道路標識を読み込んでメーターパネルに表示する「トラフィックサインレコグニション」、そして「オートハイ/ロービーム」といったお馴染みの機能に加えて「ブラインドスポットインターベンション」と「エマージェンシーレーンキープアシスト」という日本ではルノー初の新機能も追加されている。
前者の「ブラインドスポットインターベンション」は斜め後方から車両が近づいている際に車線変更しようとすると、光や音、ステアリング介入などで警告する機能。後者の「エマージェンシーレーンキープアシスト」は隣車線や対向車線にはみ出して事故の危険が迫った場合に、ステアリングアシストで本来の車線に引き戻す機能だ。

このように、新型カングーのADASは現在考えられる機能のまさに“フル”装備といっていい。数年前まではADAS整備が明らかに遅れていたルノーとしては、驚くべき速さのキャッチアップである。

新型カングーの基本骨格となっている「CMF-C/D」は最新アーキテクチャーのひとつだが、もともとは2013年に発売された先代エクストレイルで初めて世に出た「CMF」が源流となっており、今のCMFの中では新しいものではない。一方で、ここ最近の(電気自動車を除く)新型車はひとクラス下の「CMF-B」に集中しており、ADAS新機能の多くがCMF-Bで先行考採用されている。モハメド氏によると、新型カングーのADASは「CMF-C/Dの土台にCMF-Bのシステムを載せたような形」だという。

また、カングーに限らず、ルノーの最新ADASは日本特有の道路標識位置や車線にうまく対応しているのも美点。トラフィックサインレコグニションやレーンセンタリングアシストなどの各機能は、輸入車の中でも、きっちり正確に作動してくれる印象がお世辞抜きに強い。

「新型カングーも日本で5,000kmほどの実走行テストをして完成させました。欧州で使われている機能がそのまま使えることを確認しています。例えば車線の中にドット=キャッツアイが入っているのは日本特有で、そこは専用の調整が必要となりました。いずれにしても、ルノーのADASはいくつかの競合よりハイレベルだと確信しています。」とモハメド氏は自信たっぷりに語った。



  • サミルディン・モハメド/Samirddine Mohamed

    LCVテクノセンター

    ADAS担当エンジニア


    2017年よりカングーとトラフィックの電子制御系エンジニアとしてキャリアをスタート。2022年よりADASの開発者としてカングーを担当している。



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